監修:荻窪病院 血液凝固科 長尾 梓 先生
女性の出血とフォン・ヴィレブランド病についての Q&A
ここでは、月経異常や過多月経について、また過多月経の原因となる病気の1つである
「フォン・ヴィレブランド病」についてのQ&Aをご紹介します。
- どんな状態なら「月経異常」といえるの?
- 正常な月経の期間は3~7日間、出血量は20~140mLといわれます1)。
月経の期間は自分でも数えられますが、出血量を測るのは難しいですよね。
そこで、月経の異常に気づくためのチェックポイントとして、以下の3つをご紹介します。月経異常のチェックポイント 2,3)
□月経が7日以上続く
□ナプキンを2時間に1回よりも多い頻度で交換する
□100円玉サイズより大きい血の塊がでる
1つでもあてはまる場合、何らかの異常があるかもしれません。ぜひ一度、婦人科を受診してみてください。
- 月経の量が多いことは、病気と何か関係があるの?
-
月経の出血量が異常に多いことを「過多月経」といいます4)。
過多月経はその症状の裏に、病気が隠れていることがあるため、まずは原因を調べることが大切です。
過多月経の原因は、大きく「子宮に何らかの異常がある場合」と「そうでない場合」に分けられます4)。過多月経の気になる原因 1,4,5)
【子宮に何らかの異常がある場合】
子宮ポリープ、子宮腺筋症、子宮筋腫など
【そうでない場合】
■血液凝固の異常によるもの:
フォン・ヴィレブランド病など
■排卵障害によるもの
■薬の影響によるもの
…など
- 過多月経の原因になる「フォン・ヴィレブランド病」ってどんな病気なの?
- 過多月経の原因となる病気の1つとして、知っておいていただきたいのがフォン・ヴィレブランド病です。
フォン・ヴィレブランド病は、血液中にある「フォン・ヴィレブランド因子」というたんぱく質の量が少ない、またはそのはたらきに障害があるため、血が止まりにくくなる病気です6)。
性別に関係なくみられますが、海外の研究では女性のフォン・ヴィレブランド病患者さんの約7割が月経によって日常生活に何らかの支障をきたしていると報告されています7)。
この病気では、過多月経以外にケガをした時や歯科治療・抜歯の時に出血が長引いたり、家族に同様の症状がみられたりすることがあります4,5)。心当たりのある方は、月経の異常と合わせて、こうした症状についても医師に伝えましょう。
- 過多月経って、病院を受診した方がいいの?
- 月経異常の原因がわかったら、適切な治療を行うことでつらい症状を軽減できる可能性があります。
月経の出血量を減らすホルモン剤や止血しやすくする内服薬などによる薬物治療のほかに、子宮筋腫などの場合は外科治療が行われることもあります1,4)。
また、フォン・ヴィレブランド病などの病気が原因となっている場合は、その治療を行うことも大切です。
月経によるつらさは我慢しがちですが、仕事や日常生活に影響してしまうこともあります。「いつもこうだから」と放置せず、気になったら早めに医療機関に相談してみてください。
- 1)池田裕美枝、対馬ルリ子, 編集. プライマリケア現場での女性診療. 日本医事新報社. P28-33. 2016
- 2)Know Your Flow:Are My Periods Heavy https://www.knowyourflow.ie/
- 3)京哲:日本臨牀, 75(増刊号1): 590-593, 2017
- 4)石川博士:産科と婦人科, 85(11): 1309-1314, 2018
- 5)溝口秀昭, 編集. イラスト血液内科第2版. 文光堂. p236-237. 2004
- 6)白幡聡、福武勝幸, 編集. みんなに役立つ血友病の基礎と臨床改訂3版. 医薬ジャーナル社. p144-145. 2016
- 7)Kirtava A et al. Haemophilia. 9(3): 292‒297. 2003